ガス管掘削に伴う事故
ガス管の事故が起こる原因
業者がガス管の位置を正確に把握していない
建設・工事会社が地中を掘削する際にガス管を損傷してしまう事故が発生する主な原因は、その位置を正確に把握していないことにあります。ガス管は引火の可能性があり爆発や火災事故につながるので細心の注意が必要です。
地方ではLP(プロパン)ガスの割合が高いため、地中にガス管が張り巡らされることはそれほどないですが、都市ガスが普及している大都市ではガス管が深さ60cm~120cmくらい浅い地下に埋設されています。
そのため下にガス管があることがわかっていても、掘削機などで傷をつけたり重機がガス管を引っ掛けてしまう事故が絶えません。そのため政府省庁が通達を出して関連業者に向けて注意を促しています。
政府省庁が建設業者向けに事故防止を通達
建設工事等におけるガス管損傷事故の発生状況や危険性については経済産業省が把握しており、事故防止に向けて厚生労働省の関連部署に対し、2022年3月4日に協力要請を行いました。
その資料には2019年から2021年の3年間で542件のガス管損傷事故があったことが記されています。また水道工事中にガス管を電動工具で損傷させたり、解体工事中にガス管損傷による漏れが発生し着火負傷事故につながった例も紹介されています。
これを受け厚生労働省労働基準局では、建設工事等におけるガス管損傷による労働災害の防止について建設業者向けに通達を出しました。そこでは作業前の調査やガス管の危険防止、爆発防止などに関して細かく指示されています。
ガス管事故の事例
ガス管事故にもさまざまなケースがありますが、その多くはガス管埋設についての調査不足による工事中の破損事故です。ここではガス管事故の危険性と不注意により、周辺地域に与える不安状況がわかる事例を2つ紹介します。
周南市・ガス管破損事故
2021年06月19日に山口県周南市で起きたガス管破損事故です。上下水道局が産業道路の歩道で配水管敷設替のためにアスファルト舗装をカッターで切断中に、深さ12センチのエチレンのパイプを傷つけガスが吹き出しました。
この事故により産業道路は封鎖され近隣住民は退避。JR山陽本線、新幹線も運転を見合わせるなど大きな事態になりました。ガス管はコンビナート企業にエチレンを送るパイプラインとわかりガス管を閉じることで噴出は収まりました。
破損したパイプラインは1968年に埋設されたもので、直径は10インチ(25.4センチ)。地上から12センチのところにありました。ガス会社から提供された図面を見れば場所も把握できたはずのものを見誤った可能性が指摘されました。
この事例では上下水道局が事前にガス会社との立会依頼もせず、経験則で工事を進めたためパイプラインの位置を正確に把握していなかったことに原因があります。ガスは爆発事故などのリスクが高く周囲への影響が大きくなることがわかる事例です。
奈良県の工場の建設現場のガス漏れ事故
2021年5月7日に奈良県の広陵町南郷の工場の建設現場で起きたガス漏れ事故です。重機による掘削作業をしていた際に地中1.5mくらいの場所にあったガスボンベのような埋設物に当たりガス漏れが発生しました。
この事故により作業員など20名が病院に運ばれ、そのうち重体者2名、軽症者は18名。住宅街から100m程度の現場だったため付近の住民に注意を呼びかけ、消防車や救急車など20台以上の緊急車両が駆けつける事態となりました。
もともと町の水道局があった場所でしたが町自体も地中にガスボンベなどの埋設物があったことは把握していませんでした。施設の解体工事を終え、建設業者に引き渡されたばかりの状況で発生した事故です。
地中には場所が把握しやすいガス管ばかりではなく、過去に埋設されたガスボンベなどがある可能性を示唆した事例。図面情報だけでなく、掘削作業前に地中探査を行うことの重要性を改めて認識させられます。
ガス管の位置を正しく把握するには地中レーダでの埋設管調査がおすすめ
ガス管は土被りといって深さ60cm~120cmくらいの浅い箇所にあるケースが多くあります。またガス管の維持・管理のために埋設時に交差で30cm、並行する場合は60cmの離隔が必要とされています。
こうした状況を知識として理解した上で、正しいガス管の位置を把握するためには地中レーダでの埋設管調査が有効です。浅い場所であれば高周波により精密な測定ができ、3次元地中レーダで3D可視化が可能だからです。
ガス管破損事故は事前に埋設物の正確な情報を知ることで防ぐことが可能です。地面を掘り返す前にできることで、レーダ探査するために大がかりな設備は必要ありません。事故が発生すると大惨事につながりかねないので必須と言ってもよいでしょう。